【破産】弁護士・濱野先生に聞く!「破産申し立てと住宅」

Q 破産した場合、自宅を手放さなければならない?

A 破産管財人が自宅を売却し、売却代金から必要諸経費を控除した残金が債権者への配当原資となりますので、自宅に住み続けることは困難です。

Q 多額の住宅ローンが残っている場合でも同じ?

A 自宅の価値と住宅ローン残高を比べて、住宅ローンの方がはるかに大きいような場合には、破産管財人が選任されない破産手続、いわゆる「同時廃止」となることもあります。この場合、破産管財人による自宅の売却はありませんが、住宅ローン債権者が競売を申し立て、競売により売却されてしまいますので、いずれは自宅を出て行かなければならなくなるでしょう。

Q 自宅を手放すことなく、破産をする方法は?

A 破産する以上、自宅の所有権を失うことは回避できません。自宅を手放すとなると、生活圏が変わり、子どもが転校しなければならなくなるかもしれません。ペットが転居先でも飼えなくかもしれません。引っ越し費用もばかになりません。
しかし、自宅を退去せず、そのまま住み続けながら破産をする方法はあります。
予め、自宅の買主を見つけ、その人から賃借する前提で破産申立てをし、破産管財人にお願いして自宅をその買主に売ってもらうという方法です。いわゆる「リースバック」方式です。

Q こちらの指定する買主に売ってくれる?

A 破産管財人がこちらの希望する買主に売らなければならない義務はありません。したがって、破産管財人がもっと条件の良い買主を見つけてくるかもしれませんし、競争入札をすると言うかもしれません。また、こちらの希望する買主に売ってくれるとしても、売却価格の増額を求められるかもしれません。

Q リースバックを受けてから破産を申し立てるということは可能?

A そのような方法もあり得ます。特に、オーバーローンの自宅不動産を、担保権者(住宅ローン債権者)が同意して売却しているような場合には、価格の相当性も担保されていると考えられますので、その後に破産を申し立てたとしても、自宅の売却に関し、裁判所や破産管財人が問題視する可能性は低いと思われます。また、他にめぼしい資産がない場合には、「同時廃止」で処理されることも多いと思います。その場合は、破産手続の費用も安く済みます。

Q 住宅ローンが残っている場合も同じ?

A 無担保の場合や、住宅ローンがあったとしてもローン残高よりも不動産の時価の方が高い場合に、事前に自宅を売却してリースバックを受け、破産申立てをすることが可能ではありますが、裁判所や破産管財人が価格の相当性と売却代金の使途を問題視することとなります。売却相手が親族の場合は特に疑われます。同時廃止事件では処理されず、管財事件となることがほとんどでしょう。売却価格が安いということで、破産管財人が買主に対し、代金の追加を求める可能性もあります。また、売却代金の使途が不明である場合、破産管財人は、破産した債務者に使途不明金相当額の支払を求めることもあります。
無担保不動産やオーバーローンでない不動産を売って破産申立てをする場合、適正価格でなければならず、売ったお金の使途も説明できるようにしておかなければなりません。そもそも、本当にリースバックすべきかも検討した方がいいです。オーバーローンであっても、売買価格が高い場合、買主が設定する賃料が高額となり(10年から15年くらいで投資を回収するのが通常ではないでしょうか。)、住宅ローンの返済額よりも賃料が高くなってしまうこともあります。そうなりますと、リースバックを受ける前よりも生活が苦しくなってしまう可能性があるのです。