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Q 破産申立て前に、親族や友人からの借入を一括返済はあり?
A 破産申立ての前に持っているお金の中から誰にいくら返済しようと自由だと思われがちですが、破産申立てをしようとしている状況の中で、一部の債権者に返済することは、偏波(へんぱ)行為となり、破産管財人によってその返済行為が否認されるリスクがあるため、やってはいけません。
Q 破産管財人が否認するとどうなるの?
A 破産管財人は、返済を受けた親族や友人に対し、返済金を破産管財人に返すよう請求します。応じなければ、親族や友人を相手に裁判手続をとることもあります。そうなると、折角返済したのに、かえって迷惑をかけてしまうことになるのです。
Q 支払が遅れている取引先が会社に!この場合は?
A 支払が遅れている取引先が会社に押しかけてきて支払を強く求めているような場合も親族や友人の場合と同じです。支払をすることはおすすめできません。取引先への支払も、破産管財人よる否認のリスクがあります。破産手続においては、債権者は平等に取り扱われなければなりません。一部の債権者が抜け駆け的に弁済を受けてしまうと、その分他の債権者に配当する財源が減ってしまうことになり、不公平となるのです。
Q 破産申立て、債権者には無関係では?
A 一部の債権者が弁済を受ければ、破産管財人はどのような場合でも否認できるのではありません。債務者が抱えている債務を約束どおり返済できない状況(法律用語で、「支払不能」といいます。)であることを、債権者が知りながら、弁済を受けたような場合に、破産管財人はその弁済を否認できるのです。
「債権者には何も言わずに返済すれば大丈夫なのでは?」と思われるかもしれませんが、そうとは限りません。支払期限が来てないのに急に一括返済すると言われれば、貸した側は不審に思うのが通常ですし、取引先であれば、担当者が会社やお店に行き、営業していないこと(経営が悪化し、事業を継続することができなくなっていること)を認識する場合もあります。つまり、様々な事情から、債権者は債務者の支払不能を知っていたと認定されるリスクはあるのです。なお、親族や同居者、期限前に返済を受けた債権者は、債務者の支払不能を知っていたと推定されますので、注意が必要です。
Q 「推定される」とは?
A 債権者が債務者の支払不能を知っていたことの立証責任は破産管財人にあるのですが、親族や同居者、期限前弁済を受けた債権者は、知っていたことが推定されるので、債権者側で知らなかったことを立証する必要があるのです。
Q 「弁済」ではなく「担保を差し入れる」ことであれば否認されない?
A 「弁済」をするのではなく、担保を差し入れる場合でも否認されます。既存債務について担保を差し入れる行為も否認の対象となる行為です。
また、破産管財人が否認するということであれば、同時廃止事件なら、破産管財人がいないので、申立て前に返済する、ということもダメです。否認対象行為があれば、同時廃止事件から管財事件に移行する可能性がありますし、弁済の事実を隠して同時廃止事件として申し立てれば、裁判所に対して虚偽の説明をしたことになりますので、免責不許可事由となってしまいます。
破産申立てをすることになったなら、心を鬼にして弁済行為を控えることが大切です。