税理士・箕村先生に聞く!「貧乏父さんの遺産相続」
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相続は必ずしもプラスだけではない
相続イコールプラス、というイメージをお持ちの方も多いでしょう。そもそも「相続」というのはプラスの財産と、借金など返さなければならないマイナスのもの、これらをすべて引き受けるという意味になります。
プラスのものだけが欲しい、マイナスのものはいらない、そういったことは基本的に出来ません。
相続には3つの種類がある
通常の「単純承認」、これがいわゆる相続にあたります。「限定承認」というのはプラスの資産を限度としてマイナスの資産を引き継ぎます、というものです。最後に「相続放棄」というものがあります。
負債の把握はすぐに出来るものなの?
僕の経験上ですが、財産を築くことの出来る方というのは大体きちんとしています。そのため亡くなった時でもどこに何があって、何がどうだ、というのはある程度家族の方でもわかるようになっているわけですね。
今回のタイトルでもある「貧乏父さん」ですが、おそらく毎日の事業が自転車操業のようで、あくせくされているんだと思うんですね。余裕がないので、何がどこにあるのか、どこからいくら借りているのか、というのを残しておきたいけれどそんな時間もないと。
そうなるといざ亡くなった後に相続を済ませてから、財産はこれくらいあった、でも借金がもっとあった、うわまた借金出て来た!……という事態になる可能性もあります。
僕は生前のその方の動向でだいたいどんな感じか想像出来るのですが、やはり会社経営をしていて赤字の方だとそういう傾向が多いですね。
事業を「相続する」、または「放棄する」。その基準は?
まず継承する事業の業績が良くて、利益も上がっていて、順調な会社であれば負債があったとしても計画的に返していけますよね。そういう意味では債務も引き継いで、家族などが経営をしていくことになるのでしょう。
ただもう経営状況が真っ赤で、借金もあってにっちもさっちもどうにもならないという状況であれば、相続をして債務を引き継いでも先は暗いかなと思います。
家族のだれも引き継がず、従業員の方でも引き継ぐ方がいなければ、事業は解散・清算となり、会社を畳む方向に進みます。そこから破産申し立てを行い、弁護士の方が入ります。裁判所から破産管財人が指名されるので、そこで最後の手じまいをして会社がなくなる、ということになるでしょう。
生命保険も相続の対象になる?
生命保険金等は、民法上の財産ではありませんが、相続税を計算する際は相続財産とみなして相続税を課税する財産、専門用語で「みなし相続財産」と言います。
例えば社長である夫が亡くなり、会社には多額の借金がある。財産も特にないとなると、その会社を相続すれば妻に借金もそのままやってきます。そんなお金は返せない、会社経営も出来ないということになれば相続放棄になります。
ただ、亡くなった夫の生命保険として1億円が妻に支払われたとします。その1億円に関しては放棄する必要はなく、受け取ることができます。
これは夫が、自分が死亡したら妻に保険金を渡してくれという契約を保険会社と結んでいたということなんですね。なのでそこは相続ではなく、受取人固有の財産ということになるんです。
死亡保険金に税金はかかる?
いわゆる相続税、人が亡くなってその財産が移転され、移転を受けた人は相続税の計算をしていくことになります。相続税の計算の中にはその死亡保険金も含まれます。
相続で一番怖いのは「金持ち父さん」のふりをした「貧乏父さん」?
預貯金が1億円あったからよかった、と言っていても借金が実は5億円あった。または相続後にいろいろな人が借用書を持ってきて実はお父さんに貸していたと言い出す。これは困った話ですよね。
法律上、相続を放棄する場合は亡くなってから3か月以内に裁判所に相続放棄の手続きをしなければいけません。それを過ぎてしまうと難しいんですね。
大切なのは、お父さんの日ごろの状況を、お父さん側もしっかりと家族に知っておいてもらうこと。家族も把握をしておくこと。ここがポイントですね。
まとめ
・相続には三つの種類がある
・プラスの相続だけではなく、マイナスの相続も一緒に引き継ぐことになる。
・事業を相続する基準は「利益があるか」「業績が良いか」がポイント。
・事業を引き継ぐ人がいなければ、その会社は解散・清算をすることになる。
・生命保険金は相続財産の対象にはならないが、みなし相続財産として相続税の対象には含まれる。
・日ごろから負債も含め、家族と情報を共有しておくことが大切。