不動産鑑定士・飛松先生に聞く「素人には見抜けない!? 驚異の詐欺集団「地面師」とは」
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「地面師」とは
それこそ今はほとんどいないかと思いますが、バブルの時に暗躍していたのが「地面師」です。
簡単に言ってしまうと、不動産にまつわる詐欺師のグループです。
最近も都内の土地100坪超を乗っ取ろうとした疑いがあるのですが、皆さんの記憶に新しいのは数年前に東京都目黒で某ハウスメーカーが50億円ほど騙し取られた、という事件ではないでしょうか。
「地面師」の手口
彼らはまずターゲットにする土地や建物を見つけます。
どのような土地がいいのかというと、所有者の方が高齢で施設に入るなどして空き家であるとか、その土地や建物に関して誰も関与していないような場所ですね。
なおかつ、都心部の一等地であるなど、不動産価値の高い物件を狙っています。
現状空き家になっていると、現地に部外者がいても誰も気づきません。
そこへ、実際の所有者に似せた人を用意して、さらに買主を連れてきます。
そして所有者に似せた人に土地や建物の話をさせて、その人が本物の所有者であると買主に信じ込ませます。
その後金額を提示し「この金額であれば売っていいよ」という話をする。
手ごろな値段なので、買主からすれば一等地でこの値段であればぜひ買いたい、という流れになります。
そこから所有者に似せた人と買主の間で契約を進めていきます。
契約の流れの中で不動産会社の社員や司法書士に扮した詐欺師たちも用意して、最終的に契約決済まで買主にさせ、決済日に買主がお金を振り込んだその翌日には全員もういない、というわけです。
買主は代金を支払ったので、いざ購入した土地に何かを建てよう、と動いても、彼らは実際の所有者でも何でもなかったわけなので、お金を払っただけで土地や建物は手に入らない。
そういった手口なんですね。
偽造した証明書まで用意! 徹底した役作り
取引の際には本人確認が必要になります。
免許証やパスポートですね。そういったものも地面師たちは精巧に偽装したものを用意しているようです。
所有者役の詐欺師は本当の所有者の生年月日や出生地など、全てを記憶してよどみなく回答するように教育されています。徹底されていて、一般の方が見破るのは難しいでしょう。
世の中はデジタル社会ですか、不動産にまつわる書類関係は未だに遅れています。例えば登記簿などの不動産関係の書類は、偽装をしても判別がしづらいんですね。
法務局に行って検証して初めて偽物だとわかるのですが、書類を受け取って2,3日経ってから偽装された書類であることが判明してももう遅い。
また登記簿は例え確認したところで顔写真があるわけでもないので、登記簿と同じ氏名の免許証を偽造されたら……もう信じてしまいますよね。
「地面師」に限らず詐欺に遭わないために
大切なのは、信頼のおける方からの情報を基に投資をする、ということ。
一見の不動産会社からの情報だけで物件を買おうとするのは、リスクがゼロであるとは言い切れません。
地面師の話からは少々逸れますが、ネットで不動産を売買している会社はいろいろとあります。そういった会社は全国に様々な物件を持っていますが、その会社の方がすべての物件を現地確認したり、役所調査をしているのかというと、地方の物件までは手が回っていないのではないでしょうか。
そうなると、提示されている価格で物件を購入したあとに、なにかリスクが潜んでいる可能性が発生するという事態があるかもしれません。
不動産はやはり現場を見ないといけない。今はネットで写真を見たりすることが出来ますが、いざ現地に行ってみると全然違う、ということはありますから。
実際の物件をきちんと資格を持った人間がその目で見る、というのは一番大事だと考えています。
資格を持った人というか、目利きの出来る人ですね。不動産鑑定士だけではなく、信用出来る不動産会社の方でもいいと思います。実際に一般の方が自分の目で見ていいと思って判断しても、専門家からしたら「ここはやめた方がいい」と言われてしまうような物件もあるでしょうから。
不動産は買って売ったら必ずもうかる、というイメージの広告が多いですが、それが本当ならみんな大金持ちになっていますしね。
まとめ
・地面師は数は減ったものの暗躍している。
・巧妙に詐欺を仕掛けてくるので、素人が見破ることは難しい。
・詐欺に遭わないためには「現場を確認すること」「プロの目利きと同行すること」が大切。