不動産鑑定士・飛松先生に聞く「手間いらずで人気のサブリース契約にまさかの落とし穴!?」
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大量に建設されているマンション、その管理は誰が?
過去10年から15年にかけてマンションの建設ラッシュがあり、それに伴ってマンションの投資を始める方も多くいました。これらのマンションの管理パターンは主に3つに分けられます。
1つめは、オーナー自らが管理する「自主管理」。
2つめは管理会社と契約を結び、マンションを管理してもらう方法。
3つめは、オーナーが全く手つかずの状態で、すべてをサブリース会社に丸投げしてしまう「サブリース賃料契約」があります。
今回は3つ目のサブリース会社とのサブリース賃料契約についてお話をしていきます。
サブリースは管理の手間がかからず、賃料だけが振り込まれる?
マンションのオーナーがサブリース会社と契約をすることで、サブリース会社に全てをお任せすることが出来ます。手間がかからず賃料だけが振り込まれてくるので、過去のマンション建設ラッシュ時にはサブリース賃料契約がとても流行りました。
その契約を現在もそのまま継続している、というオーナーは一定数いらっしゃいます。
この契約を結べば自分でマンションに住む人を選ぶ手間もなく、所有するマンションの住人とのトラブルに関してもすべてサブリース会社が対応してくれます。
契約更新時にトラブル発生?
オーナーの手間がかからず、いいこと尽くめに感じられるサブリース会社との契約ですが、最近問題になっているのが契約更新時の賃料改定トラブルです。
オーナーとサブリース会社の間で「サブリース賃料」の契約を結ぶ際、例えば当初は月100万円で5年間、という契約を結びます。しかし5年後の更新時には「ちょっと高いから賃料を月70万まで下げて欲しい」と要請されてしまう。このようなサブリース賃料値下げ要請のトラブルが最近増えています。
オーナーも銀行からお金を借りてマンションを建て、その後年間で500万円という設定でキャッシュフローを組んでいるので、急に70万円に下げてと言われても赤字になってしまう。それで困ってしまい、どこに相談に行ったらいいのか…と悩まれて、最終的に不動産鑑定士のところに来られるというオーナーが結構いらっしゃいます。
契約のトラブルだけど、弁護士ではなく不動産鑑定士に相談?
もちろん、弁護士に相談するのも一つの方法です。ただ弁護士に相談に行くと、一般的には裁判になるという流れになります。そうすると最低でも調停から裁判、ということで1年から1年半ほど時間がかかってしまうんですね。
期間が長いことで弁護士に支払う費用も高額になってきますので、時間も費用も掛かってしまう、というデメリットがあります。
実際に弁護士に相談に行ったけれども費用が高いので不動産鑑定士に相談しに来た、という方もいらっしゃいます。
マンションのオーナーというのは高齢の方が多いのですが、身近にそういった相談の出来る相手のいる方は少ないです。専門家と知り合いになるルート自体が少ないので、だいたいはオーナーのご家族、お子さん経由で税理士に相談が言って、そこから私に話が来る、というのが多いですね。
相談件数は年々増加している?
私が初めてサブリース賃料のことで相談を受けたのが2021年なのですが、現在までの1年間で30案件程相談を受けています。
相談を受けて案件化したものが25件あり、その内23件は合意に至っています。残り2件は現在平行線ですね。
合意に至るまでの流れですが、先ほどの例えで言うとサブリース会社からの要請は「一ヶ月100万円の賃料を70万円に下げてほしい」というもの。オーナーからするとその金額は厳しいので「70万円は難しいので、間を取って85万円~90万円でどうですか?」という提案をする。そうするとサブリース会社からは金額の根拠を問われるので、そこからが不動産鑑定士の仕事です。私が根拠を示した調査報告書を作成して、妥当な賃料について提案をします。
この意見をサブリース会社に送り、サブリース会社が納得すればその賃料で合意をする、という流れになっています。
マンション所有者よりもサブリース会社の方が強い!? 新法の影響
サブリース新法、というものが2020年に施行されました。この法律では「所有者であるマンションオーナーの力が一番強いので、物件を借りている弱い立場のサブリース会社を守りましょう」という立て付けになっています。
確かに所有者の方が強い立場ではありますが、知識や経験などはマンションのオーナーよりもサブリース会社の方が多く持っています。そこにこの法律が出来て後押しをする形になり、サブリース会社が強気で交渉出来るようになっているのかな、と私は考えています。
サブリース賃料契約のトラブルを防ぐために
トラブルを防ぐためには、まずサブリース契約を結ぶ際にはしっかりと契約内容を確認すること。納得できないところがあったら契約をしない、というのが一番いい方法です。
ただすでに10年~15年前にサブリース契約を結んでしまっているというオーナーは、もしサブリース会社から賃料値下げの依頼があった際に、要請をそのまま鵜吞みにせず、専門家に意見を聞くことが大切です。その意見を聞いた結果、内容に納得が出来なければ絶対に判を押さないようにしましょう。
不動産鑑定士にも相談可能
このような相談内容を不動産鑑定士に相談出来る、ということを知らないオーナーは多くいらっしゃるようで、ダイレクトメールにそういった内容の相談もお受けしています、と記載すると大きく反響があります。
不動産業界の水戸黄門ではないですけど、個人的に弱い者いじめは嫌いなので、そういった理不尽なことをやる会社とは戦っていきたいと考えています。
不動産業界はグレーな業界、というイメージを持たれている?
日本の不動産業界にはグレーなイメージ、騙しにかかってくる、というイメージを持っている方も多いでしょう。
実際に現在はクリーンな会社も多いですが、お客様を騙して利益を稼ごう、と考える業者も残念ながらゼロではありません。しっかりとした知識をご自身がお持ちであればいいのですが、自信がないという方は交渉時に専門家を横につけて知識を補填する、ということが大切です。
土地を購入し、物件を建て、サブリース会社と契約をする。その過程のどこにおいてでも相談を受けることは可能です。30分から1時間の相談は無料でお受けして、その後鑑定など具体的なことが必要になると有料にはなりますが、不安があればぜひ一度ご相談ください。
まとめ
・サブリースは管理会社がすべてを行ってくれるので、手間がかからず人気がある。
・契約更新時に賃料のことでトラブルになることが多い。
・弁護士への相談も可能だが、不動産鑑定士への相談も可能。
・年々相談が増えている傾向がある。
・納得できない内容には絶対に判を押さず、必要であれば専門家の知識を借りることが大切。