U.K.さんが新社会人に教える「上手な話し方」
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関西ではお馴染みのDJタレント、「関西のたれ目王子」、くっすんことU.K.さん。今回はU.K.さんに「新社会人に教える上手な話し方」というテーマについてお話を伺いました。
U.K.
関西を中心に活動するDJタレント。本名は楠雄二朗、通称「くっすん」。
ラジオを中心に、現在はテレビなどのメディアや音楽イベントの司会などでも大活躍。2015年には守口市 夢・未来大使に就任。活躍の幅を今なお広げ続けている。
相手の状況がわかりづらい電話は僕も苦手
―最近の若い方たちは、電話対応が苦手な方が多いそうですね。
U.K.:これ、すごくわかります。僕もそうですから。
何故かというと、電話というのは相手がその時何をしているかがわからないので、本当に今この人は電話に出て大丈夫なのかな?と心配になってしまうんですよね。
だから僕はついつい、長文になってもLINEで送ってしまいます。LINEであれば読みたい時に読んでもらえるし、読んだというのも既読になればわかる。若い方たちも、そこからどんどん電話離れが進んでいるのではないでしょうか。
―若者の間ではSNSが主流ですが、U.K.さんの若い頃だとポケベルでしょうか。
U.K.:その通りです。今は忘れましたけど「あいうえお」の文字表も覚えましたよ。すごいですね、ここ20年でここまで時代が変わるとは。
コミュニケーションを取る秘訣「聞き上手になれ!」
―SNSなどを多用し文字でのメッセージを主とする若者が、この4月に新社会人デビューをする上でコミュニケーションの取り方に悩んでいる、という相談が寄せられています。芸歴22年、お茶の間のアイドルであるU.K.さんに、ぜひ新社会人の方へコミュニケーション方法のアドバイスをお願いします!
U.K.:それはもういたって簡単で「聞き上手になれ!」ですね。自分のことをわかって欲しいと思うとついつい自分からいろいろと喋ってしまいます。でも会社の先輩方は人生の先輩でもあり、仕事に関しては経験値も多くありますし、詳しいこと、知っていること、わかっていることも自分よりもよっぽど多いです。
ただその一方で、先輩方というのは自分の思いを押し付けてしまいがちです。だからこそ自分の主張をしっかり届けたいという気持ちもよくわかるのですが、それでもまずは聞き上手になることが大切です。
聞けば聞くほど相手は喜びます。自分の言っていることを聞いてくれる、理解してくれる、と感じてくれますから。
しっかり相手の話を聞くことで次に何が起こるかというと「君はどう思う?」とほとんどの方はちゃんとあなたの意見も聞いてくれると思います。
ただ、中にはこちらの話は聞かずに頭ごなしにワーっと言ってくる人もいるでしょう。そういった方のいる会社は、正直よろしくないですね。そういったところを査定するというわけではないのですが、そういった部分を確かめた方がいいという意味でも聞き上手をお勧めします。
U.K.:ワークとジョブの違い、というのがあると思うんです。ワークは労働。ジョブは職業。皆さんはどちらをしていきたいと考えていますか?
「ワーク=労働」はお金を儲けるための手段で、「ジョブ=職業」は自分の生きがい。これをやるために頑張っていきたいというのがジョブなんですね。皆さんにはぜひ聞き上手になって頂いて、自分にとって今の仕事がワークであるのかジョブであるのか、それを見極めていただきたい。それがとても大事なことなんです。
そしてもしその仕事を「ジョブ」だと思うのであれば、確実にコミュニケーションを取って仕事をしていくことが出来ると思います。「好きこそものの上手なれ」という言葉がまさにその通りで、好きなことに対しては、人はどんどん伸ばしていけるんですね。逆に好きではないことはなかなか伸びていきません。
ただ伸びには個人差もありますから、まずはトライしてワークかジョブかを見極めること。それがコミュニケーション上手になれるかどうかの分かれ目ではないでしょうか。
―まずは仕事に対して哲学を持つことが大切なんですね。
U.K.:そうですね。でも僕自身がそれに気づいたのは47,48歳になってからで。今までは仕事を生きがいだと思ってやっていたんですけど、手段でやっている部分があるんだと気づいたんです。
きっかけはコロナ禍ですね。いろいろな仕事がなくなっていきました。そうすると今まで関わっていたいろいろな人たちとも遮断されていき、たくさんの呪縛や束縛から解放されて気持ちが楽になったんです。ただ、楽になったのと同時に不安と孤独も押し寄せてきました。
影と光が表裏一体、一つであるように、解放と孤独も一つであるんですよね。でも僕はこの解放、というのを今までに感じたことがなかったので、幸せを感じたのも事実です。
最後のゴールを決めておけば、脱線しても必ず戻れる
―聞くことの大切さ、よくわかりました。誰かに何かを伝えるという時に、わかりやすい伝え方というのはどのようなものなのでしょうか。
U.K.:何を伝えたいか、「最後のゴールだけは決めておく」ということですね。最後の一言のために、そこまでの1分2分はどのような話をしていくか。どのようなユーモアを入れようか。小話を入れて脱線しながらも、最後はここに着地しようというゴールだけは見失わない。ゴールさえ決めておけばどんなに脱線しても必ず辿り着きます。あとは場慣れですね。
電話対応でのコツでは、「今お忙しいですか、大丈夫ですか?」と相手の方に伝えることが出来れば、相手の方も「気遣いの出来る人なんだな」と感じてくれますよね。その時に相手に時間が無いようであれば短めに要件を伝えたり、後でかけ直す、と言われればわかりました、でいいですし。
緊張を俯瞰出来るように「もう一人の自分」を作る
U.K.:電話を掛ける上で、まず一拍目が非常に緊張する瞬間ですよね。その瞬間をどうするかというと、自分じゃない自分を作る、ということなんです。
―役者になる、ということでしょうか?
U.K.:その通りです! つまり自分が焦ったり、ビビっていたり、焦った瞬間というのがあるかと思いますが、それは自分の脳が勝手にそう思っているだけ、と僕は考えるようにしています。
コロナ禍では仕事が減っていく度に不安が増幅しましたが、そんな時こそ、自分を俯瞰(ふかん)で見る、もう一人の自分を作るんです。「あれ、俺めっちゃ不安になってるやん」と客観的に思うだけでめっちゃ冷静になれますから。そういう状態を作れれば、案外何を言われてもへっちゃらです。やってみてください。
長渕剛さんとの緊張のインタビュー
―今までいろいろなタレントさんとお仕事をされてきたかと思います。その中でも特に緊張した、という方はいましたか?
U.K.:長渕剛さんですね。東京までラジオのインタビュー収録で伺ったのですが、待てど暮らせどいらっしゃらないんですよ。待たされれば待たされるほど、何があったのではないか、ものすごく不機嫌な状態で来られるのではないかとこちらは緊張して。
30分くらい経ったらマネージャーさんが飛んでいらして「いま長渕は駐車場を探しています」と。そうしたら45分後くらいに長渕さんいらして、何をしたかというとお弁当を食べ始めたんですよね。玄米おにぎりとささみのおかずの。僕はそれをじっと直立不動で見ていたんですけど、長渕さんいい人で「これ食べるか?」と聞いてくださったりね。
その後インタビュー収録が始まったのですが、始まってからはプロフェッショナルだなと感じました。すごくチャーミングな方でした。
相手の懐への入り方。ピンチをチャンスと捉える!
―相手の方に気に入られる、懐への入り方ってなにかコツはあるんですか?
U.K.:上目遣いでじっと見つめるだけですね(笑)
―新入社員の子たちにはハードルが高そうです。
U.K.:相手の懐への入り方は、先ほども話しましたが「相手の話を聞く」、それだけしかないですね。「働く」ということは何かというと、「はた」、つまり外、外の人を「らく」にする。楽しませる、ということなんです。
相手をどう楽しませるか、という意識さえ持っていればいいと思うんです。ただあまりにも気を遣い過ぎてピエロにまでなってしまうと、いじられ過ぎて今度はイビられキャラになってしまう。まずは聞き上手、これだけ心がけてください。
―この4月から新入社員として社会人のスタートを切る若い方たちは、この数年間大学もリモート授業であったり、友達ともなかなかコミュニケーションを取れず、コミュニケーション能力を培ってこれなかった方も多くいます。そういった方たちへメッセージをお願いします。
U.K.:僕はいわゆる社会人経験がないままこのお仕事をさせていただくことになったのですが、僕の周りの人たちが社会人として働き始めた頃は、理想と現実の違いにぶつかったり、最後は腐ってしまう、ということもありました。
でもね、人間ってすごいんですよ。慣れていくんです。慣れれば慣れるほど、そこに打開策が見えてくる。ピンチがあれば必ず次の扉の鍵が近くに落ちていたりするんです。
「ピンチが来た!どうしよう!」ではなく「ピンチが来た! これは新しく生まれ変わる機会がやってきたんだ」と捉えて、聞き上手になってください。
まずは3か月頑張ったら次は1年。1年頑張ったら3年、そして3年頑張った時にこの仕事は果たして自分にとって「ワーク」なのか「ジョブ」なのか、ということを一度問いかけてみてくださいね。グッドラック!