傷病手当制度とは?改正されたポイントを解説
病気やケガで働けなくなったとき、心配になる「収入」。傷病手当は病気やケガで働けなくなった方や、その家族の生活を守るための制度です。
しかし、傷病手当は申請すれば誰でももらえるわけではありません。条件や期間がきまっており、条件を満たすことで、手当金が支給されます。また、2022年1月1日から傷病手当制度が改正され、支給期間が変更されました。
本記事では傷病手当の制度や労災との違い、改正点、注意点について解説していきます。
傷病手当制度とは
傷病手当とは、病気やケガで働けなくなった「被保険者」とその家族に対し、手当金が支給される制度です。3日間以上連続で会社を休んだ場合に適用となり、最長1年6ヶ月分の手当金が支給されます。手当金は、直近12ヶ月の標準報酬月額の2/3に相当する金額が支給されます。
健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)などの「被用者保険」に入っていることがポイントです。そのため、無職の方でも加入できる「国民健康保険」や「任意継続被保険者」は支給されません。あくまでも働いている方の所得保障を目的とした制度です。
傷病手当が認められる基準は?
傷病手当が支給される条件は、働くことができるかどうかが基準となります。病気やケガをしていても、働いている場合や傷病手当を超える収入がある場合は支給されません。
働くことができるかどうかの判断として、診断書が用いられており、医師の診察が必要です。傷病手当が認められるのは、風邪やインフルエンザ、業務に支障が出るようなケガのほか、うつ病をはじめとした精神疾患も対象となります。
また、過去に同じ病気やケガで労災保険から休業補償給付を受けていた場合は、支給対象外になります。障害厚生年金や出産手当金といった「ほかの手当」を受けることになった場合も支給されません。
傷病手当は、退職後も支給されるケースがあります。退職前日まで1年間以上、健康保険に継続加入している場合が対象です。ただし、退職日に出勤している場合は支給されません。荷物の整理といった理由で会社に行く場合でも、出勤扱いにはしないように注意しましょう。
労災と傷病手当との違い
傷病手当と似た制度に、労災保険があります。労災保険は業務中や通勤中の病気やケガに対して支給される保険制度です。それに対し、傷病手当は業務外での病気やケガが対象となります。
病気やケガの発生が、業務中なのか業務外なのかがポイントです。
また、労災保険と傷病手当は支給元も異なります。労災保険は「労働基準監督署」から、傷病手当は健康保険組合や協会けんぽなどの「被用者保険」から支給されます。
傷病手当の改正点
2022年1月1日から傷病手当制度が改正され、支給期間が通算1年6ヶ月に変更されました。それまでは、支給期間が支給開始日から1年6ヶ月となっていたため、支給開始から1年6ヶ月の間に6ヶ月間働いていた場合、1年分しか支給されませんでした。そのため、その後同じ病気やケガで長期間休んだ場合は、傷病手当は支給されません。
今回の改正で通算となったことにより、働いていた期間は1年6ヶ月に含まれません。上記の場合でも残り6ヶ月分の傷病手当が支給されることになります。
また、改正前に傷病手当が支給されている場合でも、1年6ヶ月を経過していなければ、今回の改正が適用になります。つまり、2020年7月2日以後に傷病手当が支給されていれば、改正が適用されるというわけです。
傷病手当制度の落とし穴
傷病手当制度には落とし穴があります。それは全く会社に出勤しなくても、手当金を受け取れることです。例えば、入社が決まっても出勤前日にケガをして診断書をもらえば、会社で一度も働くことなく傷病手当を受け取れます。
この場合、被害を受けるのは事業者側ではなく、手当金を支払う「被用者保険」側です。もちろん、不正を調査して異議申し立てをすることもできます。ただし、調査や手続きの労力を考えると、見逃すしかないというのが現状です。
傷病手当制度を理解して正しく活用しよう
傷病手当は病気やケガで働けなくなった方や、その家族の所得保障制度です。「被用者保険」に加入していることと、医師から診断書がでる病気やケガであることが支給される条件になります。
また、制度改正により支給期間が通算1年6ヶ月に変更されました。これにより、今までの制度では支給期間が終わってしまった方でも、残りの支給額をもらえる可能性があります。