【教えて!濵野先生】弁護士に聞く!自己破産後の明け渡しって・・・!?

相談者さん:
私は、ラーメン屋を経営しているのですが、破産申立てをする場合、賃借店舗の明渡しはどうなるのでしょうか。

濵野先生:
事業を停止するタイミングで、賃貸借契約を解約し、明渡しをすることが多いと思います。

相談者さん:
明渡しをせずに、店を閉めた状態で破産することはできないのでしょうか。

濵野先生:
いいえ。そのような状態でも破産手続が開始することはよくあります。但し、明渡しをした状態で破産申立てをした場合と、明渡し未了で破産申立てをした場合では、予納金(裁判所の費用)の額が違ってきます。明渡し未了ですと、破産管財人が明渡しをすることになりますので、その分、予納金が高額になります。

相談者さん:
敷金はどうなるのでしょうか。

濵野先生:
店舗の賃貸借契約の場合、期間をおいて貸主に解約通知をしなければならない約定となっており、即時解約の場合は、その期間分の賃料相当額を一括して支払わなければならないと定められていることが多いです。

敷金はこの賃料相当額に充当されたり、原状回復費用に充当されたりして、返還してもらえないケースが多いと思います。

相談者さん:
店舗の管理会社に店を閉める相談したところ、私の店をフランス料理店に改装して営業したいと言ってきている人がいるようなのです。

店舗の中の設備や家具、内装を撤去するだけでもかなりのお金がかかってしまうので、居抜きで借りてくれる人を探してきて、その人と家主さんと私の三者で賃貸借契約の名義変更をすれば、明渡し費用の負担もなくなり、裁判所への予納金も高くならずに済むと思うのですが、そのような方法をとっても良いのでしょうか。

濵野先生:
敷金の返還を受け、居抜きで借りてくれる人が新たに敷金を差し入れるか、居抜きで借りてくれる人からあなたが敷金相当額のお金を受け取り、賃貸人に預けた敷金をスライドするかして、このお金を破産申立て費用に充てれば、そのような方法をとることも有益です。

なお、フランス料理店に改装するということですが、店の中の設備や什器備品に価値のあるものがあれば、無償で譲り渡すことは避けた方が良いです。

相談者さん:
店の従業員の一人が独立予定だったのですが、私が店を閉めて破産することを聞いて、賃貸借契約の名義変更をして自分が店舗を借りて引き続き店を営業したいと申し出てきました。この場合も、先ほどの居抜きの時と同じように考えて良いのでしょうか。

濵野先生:
いいえ。その場合は、破産管財人から事業譲渡をしたと見られる可能性がありますので注意が必要です。

相談者さん:
どういうことでしょうか。

濵野先生:
従業員が引き続き同じラーメン屋を営業するということは、あなたのラーメン屋の事業を譲り受けたということになるのです。店の設備、内装、什器備品、従業員、仕入ルート、常連客といった有形無形の営業資産を、あなたが、従業員に譲り渡したということになるのです。

そうすると、敷金や設備、内装、什器備品の譲渡価格だけを気にすれば良いということにはならず、目に見えない価値(のれん代)の対価の支払いも必要となるのです。つまり、適正な、事業譲渡代金の授受がなされ、それが破産管財人に引き継がれていなければならないのです。

相談者さん:
赤字だから店を閉めるのに、従業員はのれん代を払わなければならないのですか。

濵野先生:
事業を譲り受けて営業しているならば、事業価値が0円ということはあり得ません。本当に赤字で営業すればするほど損失が出るのであれば、そもそも事業を譲り受けることはしませんし、譲り受けた後に営業することは不可能です。その意味で、いくら赤字でもお店を引き継いだ人が営業を継続しているのであれば、破産管財人は、事業譲渡対価の相当性を厳しく調査することになるでしょう。

相談者さん:
もし、私が従業員にほとんどタダで店を引き継がせた場合、破産管財人は私に何か言ってくるのでしょうか。

濵野先生:
いいえ。事業譲渡対価が低廉であると破産管財人が判断した場合、破産管財人は、事業を譲り受けた従業員に、対価を支払うよう要求します。つまり、店を引き継いでくれた人を紛争に巻き込んでしまうことになるので、注意が必要なのです。