【破産】弁護士・濱野先生に聞く!「破産決定後のフローについて」

【破産】弁護士・濱野先生に聞く!「破産決定後のフローについて」

Q 法人や個人事業主が破産する場合の流れ(フロー)は?

A まず、Xデーを決めます。Xデーとは、事業を停止して従業員を解雇し、営業所を閉鎖して破産申立ての準備に着手する日のことを言います。当該企業の資金繰り状況を見て、最も現預金が大きくなる日をXデーにすることが多いです。
1か月のうちで、最も現預金が大きくなるのは、売掛金の入金が集中する時期(例えば月末)と、買掛金や給料などの支払日の間の時期となるのが通常です。
ですので、破産申立て費用と従業員に対する解雇予告手当や給料を確保するためにこの日をXデーとする事が多くなります。

Q それらの費用が全額支払えない場合は?

A 企業によっては、売掛金が思うように入らず、支払えない場合も想定されます。その場合は、破産申立て費用を最優先にし、その次に解雇予告手当を支払います。

Q なぜ給料よりも解雇予告手当の支払いが先?

A 企業が倒産した場合、従業員は、独立行政法人労働者健康安全機構の立替払制度によって未払賃金の立替払を受けることができる可能性がありますが、解雇予告手当は、立替払の対象にならないため、解雇予告手当から先に支払う方が従業員にとって有利だからです。
また、急に事業を停止をして、混乱が生じないよう、Xデーまでは、代理人弁護士と社長やごく一部の幹部社員のみで内密に準備を進める必要があります。

Q Xデーを決めた、その後。

A その日の始業前に、社長から全従業員に対し、解雇の通知を行います。貸与物の返却を受け、私物を持って事業所から出てもらいます。代理人弁護士も同席し、今後の予定について説明します。事業所を閉鎖し、入り口に張り紙(事業を停止したこと、破産申立て予定であること、代理人弁護士の連絡先等を記載)をします。同時に、代理人弁護士名で債権者に対し、この張り紙と同じような内容の通知を出します。この通知のことを専門用語で、「受任通知」といいます。
受任通知をするメリットは、債権者対応を代理人弁護士に一本化することができ、債務者の心理的負担を大きく軽減できます。一般消費者の方が破産申立てをする場合、債権者からの督促で疲弊していることが多いですので、代理人弁護士は受任通知をすることが多いでしょう。

Q 受任通知はデメリットも・・?

A 例えば、融資を受けている銀行に受任通知をすると、その銀行にある預金残高と融資残高を相殺されてしまい、折角入金した売掛金を、給料の支払や破産申立て費用に充てることができなくなってしまいます。一般消費者の方であれば、給与振込口座が相殺され、生活ができなくなってしまうというリスクもあります。そのようなことにならないため、Xデー前に預金口座のお金を移動させておくなどの対応が必要となります。

Q 受任通知は、すべての債権者に対してするもの?

A いいえ。税金や社会保険といった公租公課を滞納している場合、公租公課庁も債権者と言えますが、公租公課庁に受任通知をした場合、預金や売掛金等に滞納処分(差押)がなされてしまい、預金を引き出せなくなったり、売掛金を支払ってもらえなくなったりしますので、公租公課庁に対しては、受任通知をしません。ですので、受任通知もよく考えてしなければならないのです。