不動産鑑定士・飛松先生に聞く「地名でわかる災害リスク」
目次
インタビュー動画はこちら
地名を見ただけでわかることがある!?
全国には様々な地名があります。地名の漢字を見るとその地域の成り立ちや以前どのような場所だったのか、ということをだいたい読み取ることができます。
読み取り方には2パターンあり、漢字を見るのと読み方の音の響きでわかります。
漢字1文字でどういう場所だったのかがわかる!
一番わかりやすいのは漢字ですね。そこが以前どのようなところだったのかがわかります。
「水」に関する漢字、例えば「沢」や「江」というのは「大きい川があった」という意味の漢字です。
「崎」という漢字は岬があった、ということを表しているので、そこがかつては海だった、ということがわかります。
あとは「谷」ですね。地形で山と谷がありますが、谷のあった場所には必ず「谷」という漢字がついています。
例えば「渋谷」の「渋」というのは「行き詰る」という意味なのですが、あのあたりの谷が行き詰った、一番底のところにあったのが「渋谷」です。
そのため、渋谷は40~50年前までは大雨が降るたびに水浸しになってしまっていました。下水道の整備工事などを行い、ようやく40年ほど前に浸水しないようになったエリアなんです。
響きでわかるのは大阪の有名都市の由来
読み方の「音」でわかるのは、「梅田」ですね。
大阪の「梅田」という漢字は、もともとは「梅」ではなく「埋」という漢字だったんです。田んぼを埋めたから「埋田」なので、あの辺りはもともと湿地帯なんですよ。
地盤があまり強くなかったので、建物を建てる際には杭を深く打たないといけなくて、昔はあまり人気がありませんでした。
住む場所を選ぶ時に気を付けておきたい地名のこと
これは覚えておいた方がいい、というのは、わかりやすいところでいうと生き物の名前があるところですね。「蛇」や「龍」、そして「亀」です。
そういった漢字を使った地名の場所は、昔洪水があったとか、土砂崩れがあったとか、津波があった、というところが多いんです。
また「女」という漢字の入った地名は大体津波のあった場所です。
「龍」と「竜」、この二つの漢字がありますが、曲がりくねった川というのは龍に見えますよね。そういった場所の地名にはよくこの漢字が使われます。
川が曲がりくねっている場所というのは、決壊することも多い。その様子から昔の人は龍(竜)に例えてその地名を付けたんですね。
意外な漢字だと「神」という漢字ですね。
「神様」の「神」という漢字なので、神々しくていい名前だな、住んでみたいなと思う方もいるかもしれませんが、実はこの漢字のついている地名の場所では、自然災害が結構あったということです。
大阪の「谷町」は高いところにあるのに「谷」?
大阪に「谷町」という地名の場所があります。ちょっと高いところにあるのですが、あれは上町台地があの辺にあって、その谷なんです。台地が終わると、すぐそこに谷がある。だから谷町も「谷」なんですね。
地名は時代とともに変わっていく?
不動産鑑定士である僕たちは鑑定評価をする時に地名を見て、例えば「龍」がついていると「過去に災害があったのではないか」と調べることもあります。
ただ怖いのは、地名って結構変わるんですね。
「龍」のつく地名だと僕らからすると災害があった場所というのがわかってしまうので、デベロッパーの方はマイナスイメージのある地名を変えたりするんです。
よくある例がいわゆる「ニュータウン」ですね。花の名前などきれいな名前を付けられていますが、もともとの地名には「龍」がついていた、ということも結構あります。
ただそういうマイナスイメージのある漢字を使った地名だと、家が売れない。なのでデベロッパーさんが開発をする時に綺麗な名前に代えて、住みたいなと思わせるようなイメージを作って街を開発する、ということがよくあります。
昔の地名を調べることはできる?
一番簡単な方法は、法務局に行って「閉鎖登記簿」で調べること。閉鎖登記簿では、土地がどのように変遷されていったのかがわかります。
その土地の代々の所有者や、代々の街の名前がどう変わっていったのかもすぐに調べることができます。
家を建てる時は上物や素材などを意識したり、耐震性の高さなども大切ですが、土地のことを調べるのは一番大事かもしれないですね。
飛松先生のお薦めの土地は?
以前、お城の近くの土地をお勧めしたのですが、もう一つあります。
それは、歴史が300年以上ある神社やお寺が近くにある土地ですね。できれば江戸時代くらいから続く神社やお寺のあるところがいいですね。
皆さん、神々を祀る場所を選ぶ時には最も安全な場所を選んで祀りますよね。先人の知恵ということで、一番安全なところに神社お寺って建っているんです。
引っ越しをする際は、ぜひ住みたいエリアの神社やお寺を見に行くのをお勧めします。
まとめ
・地名の漢字や音の響きで、その土地のリスクがわかる。
・「梅田」はもともと「埋田」という漢字だった!
・地名は時代とともに変わることもあるが、法務局の閉鎖登記簿で調べることが可能。
・300年以上の歴史を持つ神社やお寺がある土地は安全な土地。