不動産鑑定士・飛松先生に聞く「レオパレス21 債務超過解消の実態~法律には抜け道が?~」

不動産鑑定士・飛松先生に聞く「レオパレス21 債務超過解消の実態~法律には抜け道が?~」

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レオパレス21の衝撃的なニュース

2022年5月の新聞記事に「レオパレス21 債務超過を回避し、上場廃止を回避」というトピックスがありました。

一見するといいお話のように感じますが、よくよく読んでみると経費削減のためにオーナーに支払う家賃を減らして、経費を削減する、ということが書いてあります。そんなことがあるんだな、と驚かれた方も多いのではないでしょうか。

そもそも企業が経費を減らそうと考えたら、自社で何とか経費を削減するかお客様に何とか泣いてもらうかのどちらかになるのですが、レオパレス21の場合は自社で減らしようがなく、最終手段でお客さんに泣きついたというのが実際のところなのではないでしょうか。

レオパレスの「二本の柱」の崩壊

今から3年前、2019年にレオパレスの界壁問題というのが結構話題になりました。

これはどういうことなのかというと、通常アパートを建築する際に普通の建設会社であればしっかりと土地を地ならししてから建物を建てて入居者を入れる、というのは普通なんですね。ですがレオパレス21はそこの費用をケチったというか、安く建ててしまったあまりに壁や天井など様々なところに不具合が起きてしまいました。一番ひどい物件だと、地震が起きたら潰れてしまうようなものもあったとか。

ここからなぜ上場廃止危機までいってしまったのかというと、レオパレス21の収益の柱は2本あります。

1つは建築で収益を上げること。例えばアパートを一棟建てると建築費用は1億から2億円とかなり大きな金額がかかるのですが、そのうちの3割が利益になれば、利益は何千万円もありますよね。

つまりオーナーさんが1億円を支払い、そのうちの7千万円は建築費として、残りの3千万円を会社の利益にする、というのが1つの収益の柱だったわけです。

そしてもう1本の柱は、オーナーさんが建てたアパートなどをレオパレスが一括して借り上げるんですね。例えば月100万円でオーナーさんから借りて、それをテナントさんに120万円で貸せばその差額はそのままレオパレスの利益になります。

この建築の収益と賃貸の収益の二本柱でレオパレス21という会社はかなり儲かっていたのですが、先ほどお話しした界壁問題で新たにレオパレスで物件を建てようという人がほとんどいなくなってしまった。そうすると建築の収益が完全になくなってしまいますよね。片輪が外れたようなものなので、それで経営がグっと傾いたというのが一番の大きな理由です。

 

まさかの抜け道! サブリース新法

不正工事から始まった企業の不振を改善するためにオーナーさんたちを泣かしたという構図になるわけですが、こんなことは法律上許されないのではと思う方も多いでしょう。しかし、抜け道があったんですね。サブリース新法というのが出来てからはそれが認められるようになり、レオパレス側も結構強硬に賃料の値下げを要求しています。

今までであればオーナーさんが弱い立場、不動産屋が強い立場だよね、ということでしたが、サブリース新法の施行後は貸主であるオーナー側よりも借主であるレオパレス側を守りましょうという法律の立て付けになってしまいました。それをいいことにむちゃくちゃしているな、というのが今の問題ですね。

 

実際にオーナー側からの相談は来ている?

2021年から今年の2022年にかけて、40物件ほど相談を受けています。そのうち案件化したのは32~33件ですね。これらはほぼ95%解決している状況です。

簡単に相談内容を説明しますと、レオパレス21側から収益改善をしたいのでオーナーさんへ支払う賃料を100万円から70万円にしますよ、という通知を一方的に送ってきます。

知識のないオーナーさんはこういった書面が送られてくると「こんな風に言われたら下げないとしょうがないのか」とついハンコを押してしまうんですね。ですがオーナーさんも現金でアパートを建てる方よりも融資を受けて建てる方が多いので、収入が100万円から70万円になってしまうと融資が滞ってしまう方もいます。

そこで困ったオーナーさんは弁護士さんや不動産鑑定士に相談にいく、という感じですね。

ちなみに僕がこの件で新聞社からインタビューを受けた際、その記事が全国版に掲載されたので、東京都から九州までいろいろな地域のオーナーさんから相談を受けました。その期間は半年から1年ほどですね。

 

不動産鑑定士に相談して、落としどころはどれくらいになるの?

落としどころについては物件によります。賃料が相場に比べて高いとか安いにもよるのですが、
だいたい3割の削減依頼が来た物件だと、落としどころは10%や5%といったところですね。

 

一番大切なことは「ハンコを押す前に確認すること!」

この問題について、もし書面が送られてきて、その書類にハンコを押してしまうともうどうしようもないんです。

ハンコを押した後に相談に来られても、「もう押しましたよね」と先方に言われてしまったらもうそれでおしまいになってしまいます。

そのような書類がもし来たらすぐにハンコを押さず、しっかりと内容を確認して冷静に考えてみることが大切です。

 

まとめ

・レオパレス21は「建築」「賃貸」、この2本の柱があった。

・界壁問題で建築案件が減り、債務超過の危機に。

・債務超過の危機はオーナーへの賃料値下げで回避。

・賃料値下げ依頼が来ても、まずは不動産鑑定士などへ相談することが大事。

・送られてきた書類にはすぐにハンコを押さず、しっかりと確認を!