【倒産】弁護士・濱野先生に聞く!「破産と財産」
目次
Q 破産すると、財産を残すことはできない?
A 法人(会社)の場合、破産手続が開始すると法人は解散となり、破産手続が終了すると、法人は消滅しますので、財産を残す必要がありません。したがって、法人の場合は、財産を残すということはありません。但し、破産管財人がどうしても資産を処分できず、放棄するということがあり、その場合には、結果的に法人の資産が残ってしまうことがあります。他方、個人の場合、破産しても生活していかなければなりませんので、一定の財産を残すことができます。
Q 具体的にどのくらいの財産を残せる?
A 以前、個人の破産では、「同時廃止事件」と「管財事件」があると説明しましたが、いずれの事件になるかで、残せる財産が異なります。
同時廃止事件というのは、破産管財人を選任して破産手続を進めるほどの財産がない場合の破産手続ですので、そもそも、債務者の方には資産がほとんどないのが前提になります。
ですから、同時廃止事件となる債務者の方の場合は、少額の現預金や掛け捨ての生命保険、古い自動車、住んでいるアパートの敷金といった、手持ちのごく僅かな資産が残るということになります。
Q 同時廃止事件相当の債務者の方が残せる資産の上限は?
A もちろん、上限はあります。業界用語で「振分基準」(ふりわけきじゅん)といいます。同時廃止事件と管財事件を振り分ける基準です。債務者の方が振分基準を超えて資産を持っていると、管財事件になり、破産管財人が選任されます。振分基準は裁判所によって異なりますので、事前に確認しておく必要があります。因みに、大阪地裁の振分基準の概要を紹介しますと、現金と普通預金を合わせて50万円超ある場合、管財事件となります。また、預金(普通預金以外)、保険、自動車、敷金・保証金、退職金といった個別財産のいずれかについて、20万円以上の価値のあるものがあると管財事件となります。
Q 賃貸の敷金・保証金は20万円以上に…その場合は管財事件?
A 一般的に、敷金や保証金は、差し入れた金額から未払賃料や原状回復費用等が控除されて返還されますので、それを考慮して評価します。ですから、差し入れた金額が20万円以上だからといって直ちに管財事件となるわけではありません。
Q 住宅ローン付の自宅不動産は同時廃止事件?
A 不動産の時価からローンの残額を差し引くとマイナスになるような場合(いわゆるオーバーローンの場合)は、一般的に不動産は価値が高いと見られますので、オーバーローンであっても、同時廃止事件とはならず、管財事件となるのが原則です。但し、不動産の価値を大幅に超えるローンが残っている場合には、同時廃止事件となる余地もあります。オーバーローンの不動産がある場合に同時廃止事件とするかどうかの基準も裁判所によって異なりますので、事前に確認する必要があります。
Q 同時廃止事件となった場合の債務者の自宅は?
A その基準を満たして、同時廃止事件となった場合、管財人が積極的に不動産を売却するということはありませんので、債務者の方が事実上住み続けることは可能です。しかし、破産したことにより、債務者の方は残った住宅ローンを一括して弁済する義務を負うことになり、一括返済は不可能ですから、いずれ不動産は競売にかけられ、住み続けることができなくなると思われます。