【法改正】弁護士・横田先生に聞く「相続法改正」後編

弁護士・横田先生に聞く「相続法改正」後編

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後編では相続の具体的な方法についてお話ししていきます。

相続の効力_相続って借金も相続する?

相続は「一切の権利義務を承継」

「一身に専属したもの」:被相続人本人だけの権利。生活保護受給権や扶養請求権

「一切の権利義務を承継」なので、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金や保証債務など)も承継する。

相続が開始した場合、相続人としては、3ヶ月以内に、相続を受けるか、受けないか決定する必要があります。

マイナスの財産が多い場合、この「相続放棄」を検討することにります。

 

相続の承認_あとから借金が出てきた場合でも支払う義務はある?

普通に相続することを選択した場合、法律上、「単純承認」と呼びます。
「無限に」権利義務を引き継ぐことになります。

そのため、後から出てきた借金であっても基本的に支払う義務があるということに。

そして、相続人が一定の行為をした場合、またはしなかった場合には、法律上「単純承認」をしたとみなされてしまう場合があります。

 

限定承認_借金が心配だったら相続放棄するしかない?

相続制度には、「限定承認」と呼ばれる制度があります。

これは、プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を引き継ぐという制度です。

「限定相続」とよばれることも。

 

限定承認は初耳です。デメリットは?

限定承認というのはとてもメリットのある制度なのですが、デメリットもあります。

「限定承認」の制度使うためには、相続人全員の同意が必要になります。

相続人の一人でも反対があれば使うことができません。

また、限定承認をするということが、国が発行する官報という新聞に掲載されます。

手続きが少し複雑で、その分費用もかかってしまうというデメリットがあります。

 

相続放棄_相続放棄したい場合、「放棄します」と言えばいい?

相続放棄をする場合、単に「放棄します」というだけではなく、家庭裁判所に「相続放棄申述書」という書類を提出する必要があります。

また、相続放棄には、3ヶ月以内という期間制限があります。

この期間を経過してしまうと、基本的に相続放棄はできなくなります。

迷っている場合などは、早めに期間延長の申請をしておいたほうが無難です。

 

遺言(いごん、ゆいごん)

法律上は「いごん」と読みますが,一般的には「ゆいごん」と読まれます。どちらでも構いません。

遺言の書き方のルールは?

自筆で遺言を作る場合、全文の自筆、日付、署名、押印が必要になります。

ただし、相続法改正によって、「財産目録部分」は手書きでなくてもよくなりました。

簡単にまとめると①から③の3点が必要となります。

コピー用紙に手書きでも遺言になる?

たとえば、コピー用紙に

「遺言 ●●に全財産を与える。 日付 氏名 印鑑」

この程度の書き方でも、法律の要件をみたす遺言になります。

自筆の遺言の場合、「検認」という裁判所のチェックがあります。

なお、公正証書で遺言を作った場合には裁判所の検認の必要はありません。

遺言の保管サービスが始まった?

令和2年7月から、自筆証書遺言の法務局保管制度がはじまっています。

保管した遺言は裁判所の「検認」が不要となり、保管時に形式面の確認をしてもらえます。

ただ、内容面は確認されないため、万全を期すには公正証書遺言のほうが安心です。

 

遺留分_遺言によってもらえる遺産が減っても「遺留分」がある?

先ほど出てきたこの遺言の場合、全財産が一人に与えられることになっています。

遺産をもらえない相続人がでる可能性があり、このような場合、遺産をもらえない相続人には「遺留分」という定の権利が保障されます。

遺留分としてどの程度保障されるのかというと、

・直系尊属(父母、祖父母)のみが相続人の場合、遺産の3分の1が相続人らに保障

・それ以外の場合(つまり、配偶者がいる場合や、子や孫がいる場合)遺産の半分が相続人らに保障

なお、「兄弟姉妹以外の相続人」とあることから、兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分にも時効がある?

遺留分の請求には期間制限があります。

・相続の開始及び遺留分の侵害を知った時から1年

・相続開始の時から10年

で時効によって消滅します。

遺留分の請求を検討する場合、期間制限には十分注意しましょう。