不動産鑑定士・飛松先生に聞く「恐怖の大逆転!? 相続マンションの路線価認めず」
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最高裁で相続マンションの路線価認めず! の衝撃
最近、衝撃的なニュースがありました。相続したマンションの路線価を最高裁が認めなかった、というものです。
相続が発生すると、税理士が路線価を以て不動産価格を算出して申告する、という一般的なルールがあります。
今回の案件もこちらに則って申告をしたのですが、路線価と実勢価格、いわゆる時価が4倍ほどかけ離れているという点が争点となり裁判になりました。
この争いは、最高裁で判決が下され国税局の勝利となりました。
つまり、国税局が申告した路線価を覆して勝ってしまった、ということです。
路線価と実勢価格の差は都心部と地方で関係性が変わる
東京や大阪の都心部では、路線価と実勢価格の差が3倍、4倍というのは実はよくあるケースです。
その上で、一般的に案件が100件あったとしたら、90~95件は路線価で税理士が評価をします。
逆に言うと、税理士は路線価でしか評価が出来ないのでそうせざるを得ないんですね。
残りの5件~10件に関しては特に地方圏にありがちなのですが、路線価の方が時価よりも高いというエリアがあるんです。
そうすると余計に相続税を支払わなければならないので、私たち不動産鑑定士が間に入って鑑定評価を行い、例えば路線価は1億円ですが実勢価格は8000万円です、という評価をする。
それが通れば8000万円で申告することが出来ます。
これはとてもレアなケースです。
このように、実際は基本的に皆さん路線価で評価をしているんです。
今回も一般的なやり方で申告をしていた、でも覆されてしまった。そこが業界全体でも話題になりました。
路線価が実勢価格より上回る状況。どんなシチュエーションで起こる?
路線価は私たち不動産鑑定士が作業をして決めています。路線価はずっと昔から、バブルの前から存在しています。
例えばこの道路の路線価は1平米あたり50万円、とバブルの時に決めたとします。
その後その道路の実勢価格は、年に3割から4割下がっています。
ただ路線価というのは課税をするための制度なので、一気に固定資産税を下げることは出来ません。
その為、マイルドに年々下げていきます。
そうなると、実勢はどんどん下がっているのに路線価がそんなに下がり切っていない、という事態が長く続くことになり、実勢価格と路線価の差がどんどん空いてしまった。
そういったことが起こることもあります。
たとえば昔人気のあった地方のリゾートエリア。
バブル崩壊とともに実勢価格は下がったけれど、路線価の方がまだそこまで下がり切っていない。
その為に路線価と実勢価格の関係がひっくり返ってしまう、ということもあります。
今回のポイントは「売却による実勢価格の裏付け」がなされたこと
今回の案件を詳しく解説していきます。
ネットで見る限りの情報ですが、相続対象の2つのマンションは故人が12億数千万円で購入されています。
実勢価格は売買価格と近いので、おそらく実勢価格は12億前後になっていたのでしょう。
ですが路線価で計算をすると3億円数千万円だった。
この案件はおそらく税理士が申告をしていると思うのですが「一般的なやり方である路線価で行きましょう」ということになったのでしょう。
申告をされる被相続者も安くなるしそれで行きましょう、となり、申告をした。
けれど国税局が「これは明らかに安いでしょう」と気づいたんですね。
普段であればそれで特に何もなく終わりなのですが、今回は被相続者がすぐにこの物件を売買してしまっている。
ここがポイントなんですね。
実際にこのマンションは12億円で売れたそうです。
12億円で売って12億円で買われたということは、当然実勢価格(時価)は12億になる。
ここを確定させてしまったので、さすがに国税局もこれを3億と申告するのはだめでしょう、と。グレーのラインから黒のラインに移ってしまったのです。
今回国税局が覆したのは「売ってしまった」というのがポイントなんですね。
というのも、申告金額が少ないとしても国税局が鑑定まで取って覆しにくるのかというと、おそらくそこまではしなかったのではないでしょうか。
ただ被相続人がすぐに売ってしまったので、12億円という実勢価格の確証を得てしまった。それならひっくり返しましょう、という流れだったのだと思います。
日本でこのような判決が出たのは初めてのことです。
路線価での申告が覆されるケースはよくあるの?
実は私のお客様でもそういった案件がありました。
数年前、工場を相続した方から相談があり安く相続申告をするために私たちのところで不動産の評価をして、それを基に申告をしましょうという話になっていました。
ですがこの方が鑑定報酬をケチってしまい、鑑定を取らずに勝手に価値を決めて申告をしてしまったんです。
深刻から1・2年が過ぎ、その方が工場を売却したのですが、高い価格で売れてしまった。
そこで国税局の調査が入り、相続時の申告と売買価格が全然違いますねという話になり、ひっくり返ってしまい、追徴課税を支払うことになってしまいました。
実勢価格を確定してしまわなければ……
今回の案件について、個人的な意見ですが申告を路線価でしたのは「グレー」だと思います。
皆さんそうしているので、申告に問題はないのかなと考えています。ただ今回は申告後にすぐに売却し、売買金額が確定されてしまったところがミソですね。
一般的な方法に則って基本的に路線価以外評価する所はないよね、という話からわざわざ自分で実勢価格を出してしまった、その「答え合わせ」を国税局にされて、結果アウトになってしまった、という感じですね。
どれくらいの期間を空ければ国税局の「答え合わせ」を回避出来る?
相続案件は、日々人が亡くなっていくので、案件としてはどんどん増えていきます。
案件が増えていく中で、国税局の担当者は人事異動が3年に1回くらいの頻度であります。
基本的には3年から、長く見積もっても5年見れば「答え合わせ」のリスクは急激に低くなるのではないでしょうか。
相続して申告してから3年間は追われる可能性が高いと思いますので、相続が起きてから3年間は何も手をつけずに置いておいた方が安心なのではないでしょうか
グレーの領域を何も知らずに歩くのはとても危険
不動産投資用にマンションを購入される方も多いかと思いますが、踏み込んでやり過ぎると逆に危険です。
何もわからずにグレーの領域を歩く、というのはとても危ない。
私の仕事も節税をするために、グレーな部分でコンサルティングをすることがあるんですね。
これは皆さんもやっていて、グレーはグレーで、あくまでも黒ではないんです。
そこをプロがテクニックとしてやる分には良いと思うのですが、一般の方が知らず知らずに専門家を交えずに踏み込んでしまい、黒に飛び込んでしまう方は結構いらっしゃいます。
そこが一番危険です。
不動産の領域になると税理士でもわからないこともあります。
実際、私たちのところに税理士から教えて欲しい、と問い合わせが来ることもあります。税理士や鑑定士、あとは弁護士あたりの専門家を入れて、きちんとスキームを建ててやらないとひっくり返されるリスクがどうしても出てきます。そこをきちんとすることが大事ですね。
私たちもお客様からお金をもらってビジネスをしている限りは、お客様にも得をしてもらわないと意味がない。なるべくグレーから黒に行ってしまわないように、なおかつ真っ白だと税金をたくさん納めることになってしまうので、あくまでも黒に近いグレーの部分でどれだけ出来るのかが価値なのかな、と考えています。
まとめ
・路線価を基本に申告していたが、それがひっくり返るという案件が発生。
・ポイントは「売買による実勢価格の確定」
・路線価と実勢価格が乖離することは都心部でよくあること。
・レアケースではあるが、地方では路線価と実勢価格が逆転してしまうことも。
・グレーの領域には安易に一般人が踏み込んではいけない。